最近、歯の神経の治療(根管治療)も以前よりも知名度が上がってきて、MTAという材料についても聞いたことがあるかもしれません。
”Mineral Trioxide Aggregate”の略になります。
MTAの硬化は無機酸化物と水の反応(水和反応)による硬化様式で、ケイ酸カルシウム水和物の固体と水酸化カルシウムが作られます。
MTAは海外ではメジャーな材料なんですが、その一番の特性として、
水分がある中で硬化してくれる。(親水性)
強アルカリ性である。(抗菌性)
固まる時に僅かに膨張する。(硬化膨張)
体の中で異物として認識されにくい。(生体親和性が高い)
があります。そのため、歯の変な部分で孔が開いてしまっていて(穿孔)、そこで炎症がおき、細菌の感染からその部分に骨の裏打ちがないときなどに非常に有用です。
基本的にはMTAの粉末と精製水を練って使うのですが、(製品によってはペーストもあります)、やはり以下の時にとても良い材料だと思います。
穿孔→ 粘度を持った状態、または塊としてピンポイントにアプローチして穿孔部を封鎖できる
封鎖性→ わずかに効果膨張するので、リーケージによる漏洩がなくしっかり封鎖できる
炎症、細菌→ 炎症があると、酸性に傾いているのですが、MTAのアルカリ性によって、残った細菌の活動性を鎮め、炎症を抑えてくれる
(細菌自体は基本的には治療によって、数を減らしますが、わずかに残っている可能性がある細菌の活動性を抑制し、封じ込める)
骨の裏打ちがない→人工材料だが、生体親和性が高いのでその上に骨細胞が増え、骨が作られる
基本的に歯科の材料は硬化収縮するものが多かったり、接着性を高めるためには水分がNGだったりするので、上記MTAの特性はとても有用な特性です。
ただ、MTAに慣れてないと扱いにくいし、どのような場所などに使うか?なども使い慣れていない人には難しいかと思います。
基本的な考え方としては道路のモルタルと一緒で最終硬化までの時間が必要です!
もちろん医療用に改変された無機酸化物からなるポルトランドセメントですが、ポルトランドセメントは道路のコンクリート成分でもあります。
セメントが最終硬化を行うときに十分に水分の養生が必要なのと同様に、MTAセメントも生体内での水分があって大丈夫なんですね〜〜
ここらへんは仙台のS先生が大変お詳しく(もちろん前職がI重工業でセメントのプロ!!)、さまざまなメーカーからのMTAについてS先生の講演で勉強させていただきました。ここで改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。
(S先生、ご自身が関わった橋梁なども説明してくれました〜〜〜。大変楽しかったです、ありがとうございます。)
と、ここまでMTAの仕様としてはやはり、穿孔か歯根端切除術の逆根管充填に使うのに非常に向いていると思うんですが.....
保険ではこの使い方が許可されてないのです.....
その代わりに、偶然神経が出てしまった時に神経を保護するような目的の場合、保険での使用が許されています。
最近、MTAの特性に着目して、MTA成分を入れたシーラーなどもありますが、保険で使用できるMTAシーラーなどもあります。こちらはピュアなMTAという分類ではなく、シーラーとしては他にも成分が入っていたりするので、純粋にMTAという言い方は厳しいかなというものもあります。
MTAそのものについて私見を述べてみました。